方法マシン主催公演『サーチエンジン』![]() 18:30開場/19:00開演 ■会場: 山手ゲーテ座 ■入場料金:前売1500円、当日2000円 ■出演:大井浩明(名誉マシン)、方法マシン ■企画・主催:方法マシン ■制作:今井貴紗子 ■制作協力:ナヤ・コレクティブ ■協力:山手ゲーテ座/創造空間 9001 /横浜ホステルビレッジ/横浜創造界隈 ZAIM ■後援:横浜市芸術文化振興財団 ![]()
『サーチエンジン』について従来のようにあらかじめプログラムが決められているのではなく、舞台上に設 置されたインターネットのサーチエンジンを使用して楽譜を検索し、演奏曲目を 決定します。選曲の過程から、楽譜のプリントアウト、プリントアウトされた楽 譜の演奏まで全て見せます。主催者や演奏家の主観などによる選曲でもなく、公 募による抽選でもない、完全に機械的なプロセスを経て構成されるコンサートです。 このコンサートは、以下の三つの要素で成り立っています。 1 まず簡単な検索ワードを元に、インターネットでピアノ曲の楽譜を検索する。 2 検索された楽譜はプリントアウトされる。 3 プリントアウトされた楽譜はただちに名誉マシンとして迎えられるピアニス トによって演奏される。 これらは全て観客の前で行われます。 このように『サーチエンジン』は従来のコンサートのプログラムコンセプト (選曲方法の理念)とは一線を画した方法で選曲されるコンサートになってま す。察しの通りコンサート当日になるまで、どのような音楽が演奏されるかは 誰にもわからないスリリングな公演となるでしょう。 『サーチエンジン』は偶然なのか?方法マシンが本公演で行う〈インターネットで検索をする〉という過程は、そ れ自体は言うまでもなく他の誰でも実行可能なことである。それどころか勿論、 誰もがあらゆる局面で実行している過程と寸分も違わない。挙句この過程による 「選曲」は、他の誰かが実行したとしても同じ結果になるだろう(公演の瞬間に 於いては)。 もういちど、本公演の特徴を確認してみたい。まず、本公演は前項「『サーチ エンジン』について」に書かれている3つの要素を持つ。ここに、これらが「全 て観客の前で行われ」ることを加えて、以上4つが本公演の特徴と言える。 あえて触れてみたいのは、この方法では「コンサート当日になるまで、どのよ うな音楽が演奏されるかは誰にもわからない」一方で、コンサート当日、あなた が開演の瞬間に検索したとしても決まる曲目は同じになるだろうということだ (当然、同じ単語を入力する限りで)。 いったい誰が選曲しているのか? 本公演における方法マシンは曲目の選考委 員ではなく、そしてその担当は誰もいない。けれども検索は(方法マシンの実行 する手順を経過して)確かに曲目を決定する──その結果は、誰によって(誰に とって)最適化されているのか? たとえば、特定の誰かが曲を選んでいるので はなく、しかしながら地球上で検索を繰り返している全員が選曲に参与している とは言えるだろう。 この「選曲」方法をどう評価すればいいだろうか? もしあなたが本公演の曲 目を聞くに堪えないものと感じるならば、その先には、検索に溢れた我々の日常 こそが見るに堪えない羅列の参照によって出来上がっているということさえ立ち 現れてくるだろう。 労働・創作・夕食の献立……日常生活のあらゆる局面で消費される〈ちょっとキー を叩くくらいの弱いエネルギー〉が、本公演の曲目を綯い交ぜにし、もしくは誰 かの生活を歪に決定し、あるいは絵画や詩や音楽を破壊する。 検索を参照する日常は、はたして主体をも融解させる。誰一人として本公演の 曲目を決めないのと同じように、検索をするとき、あなたの人生もまた誰でもな いものによって決められている。検索することの堆積が検索結果を組み上げてい くのと裏返しに、この環境があるからこそ手放しに検索することが可能になって いる、という対を持つ状況が生じている。 ボードリヤールの例と同じ仕方で言おうとすれば、誰があなたを検索しているの だろうか? 少なくとも検索エンジンとあなたとは共犯関係にあるはずなのだが。 もちろん方法マシンは、コンサートの曲目が何であったかについては保証し得る。 けれども、まさにその曲目が選ばれてしまったことについては方法マシンは何 ら特別の責を負い得ない。 演奏曲目![]() [第一部:起動]8曲 Adam Morgan - Etude No.3 Gilbert De Benedetti - The Monkey and the Mirror John Mitchell - Op. 2 Seven Color Pieces for Piano : 1. Violet Robert Schumann - Kinderszenen : Tra¨umerei, opus 15 no 7 J.S.Bach - Minuet in D minor Antonio Vivaldi - Winter : Largo David Nevue - Solitude Akon - Don't Matter [第二部:加速]40曲 Moszkowski - 15 Etudes de Virtuosite (Op72) No.1 Scott Joplin - Maple Leaf Rag Dan Connolly - Arpeggio in D, a three−chord ditty with bridge Scriabin - Prelude, Op59 No.2 Johannes Brahms (Arr by Gilbert DeBenedetti) - Lulluby The Fray - How To Save A Life R.Nathaniel Dett - Cave of the Winds Jingle Bells Volkmann - Ernster Gang. Anonymous - Aria Arr by Alana LaGrange - Nearer my God to Thee Mozart - Rondo Alla Turca (III) Koji Kondo(Arr by Joseph M.Rozell) - Don't Stand on the Donut Arr by Ben Landis - Teenage Mutant Ninja Turtles KANON - 日溜まりの街 (KEY) 東方紅魔郷 - おてんば恋娘(ZUN) フリーチベットプロジェクト 3つの想い〜楽譜に託して〜 Happy Birthday to You Fr.William Dinga, Jr. - Our Father Pachelbel - Canon in D Five for fighting - Superman Robbie Williams - She's The One J.S.Bach - BWV114 Minuet You Raise me up James Ray Morris - For Patti, only Arr by Alana LaGrange - Nearer my God to Thee Silent Night Arr by Ben Landis - Pollyanna (I Believe in You) Hanon no.1 movie "Prince of Egypt" - When you believe Simon & Gargunkel - Bridge Over Troubled Water TheKen(Transcribed by Peter Yang) - Numb Beethoven - Fur Elise Enya - Caribbean Blue 東方永夜抄 - 恋色マスタースパーク (ZUN) T.Badarzewska - A Maiden's Prayer Mark Mothersbaugh - The Sims 2 Theme -Seasons- Jonathan Coulton (Arr. Jarrett ) - Still Alive Scott Joplin - The Entertainer [アンコール] Fujita Junpei - ありがとう、あなたへ from H20 〜Footprints in the Sand〜 平成20年度[第12回]文化庁メディア芸術祭入選2008年7月18日にゲーテ座で行われた方法マシンによる 『サーチエンジン』が平成20年度[第12回]文化庁メディ ア芸術祭のアート部門に、2,146作品の応募の中から、 「審査委員会推薦作品」として入選しました。 http://plaza.bunka.go.jp/festival/2008/recommend/ 文化庁メディア芸術祭は、年に一度行われるアートとエ ンターテイメントの祭典であり、特にアート部門ではメ ディアアートを扱う部門ではありますが、『サーチエン ジン』は方法マシンがプロデュースしたコンサートプロ ジェクトとして、音楽部門が設けられていないにも関わ らず、音楽としての立場で応募しました。 その上での入選ということは、『サーチエンジン』は現 代のメディア社会と音楽の関係を考える上で審査員にとっ て無視できなかった試みだったのだろうと認識していま す。 2月4日から受賞作品展が国立新美術館がありますので、 まだ何を行うかは未定ですが、是非ご来場頂ければと願 います。 注1: メディア芸術祭のweb上では安野太郎(方法マシン) という表記で紹介されていますが、『サーチエンジン』 は、基本アイデアこそ私が考えたことは確かですが、名 誉マシンを始めとして、方法マシンメンバー全ての力で 行った公演です。 注2: メディア芸術祭のweb上ではインスタレーション とカテゴライズされておりますが、『サーチエンジン』 は方法マシンによるコンサートプロジェクトです。 (追記:その後、確認の問合わせをした結果、 「インスタレーション」は誤表示であることが判明し、 「その他」に訂正されました。2008.12.16) 2008年12月9日 |
方法マシン『サーチエンジン』デモンストレーションビデオ(ハイビジョン対応)
第一部『起動』![]() ![]()
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第二部『加速』![]()
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![]() 演奏中も検索とプリントアウトは続く。 ![]() プリントアウトされた演奏前の楽譜。 ![]() シュレッダーにかけられた演奏後の楽譜。 ![]() 聴衆の多くは、通常の演奏会にあり得ない曲目の組み合わせと、全曲初見による超人的な演奏を楽しみながら、私たちを取り巻く情報化社会との関わり方をダイレクトに感じ取っていた。 |