『ハノン大演奏会』とは?徹底解説!

 『ハノン大演奏会』は「ハノン・ピアノ教本」全曲演奏コンサートと「シャルル・ルイ・ハノンの墓」のカフェ形式演奏で構成される。

「ハノン・ピアノ教本」とは約130年前に出版された曲集で、ピアノの練習課題として、すべての指を均等に独立させることを目標とした60曲が収録されている。作曲者はシャルル・ルイ・ハノン。
(1819年7月2日フランス生まれ、1900年3月19日没)

ハノンは演奏技術の効率のよい練習方法を追求した音楽教育者であった。「ハノン・ピアノ教本」以外にも、オルガンや伴奏法のメソッドを出版した。彼以前の練習曲やエチュードは(たとえばベー トーヴェンやショパンを弾くための練習音楽など)当時の音楽様式 に基づいた「音楽」作品だったが、「ハノン・ピアノ教本」は「技術訓練」に徹した革命的な発想によっていた。

全曲の構成は以下の通り。第1部「指が、素早く、力強く、1本1本独立して、均等に動くようになるための準備練習」(1から20番)、第2部「もっともむずかしいテクニックのための準備」(21から43番)、第3部「最高のテクニックを身につけるための練習」(44から60番)。

多くのハノン経験者には嫌々練習してきた記憶があり、こんな技術練習ばかりやっても音楽性は身に付かないという意見もある。しかし「技術訓練」と「記譜通りの正確な演奏」こそが方法マシンの課題であり、意義を見出している。

こうした「ハノン・ピアノ教本」へのオマージュとして作曲されたのが「シャルル・ルイ・ハノンの墓」である。オリジナルの「ハノン・ピアノ教本」に見られる構造を採りながら、そこにない運指・音型を網羅したもので、シンプルで膨大なパターンを合理的にプログラミングし、フィルター操作によって類型化した、方法マシン初の創作作品となる。

まず教本の第1部を占めている16分音符8個の2拍を1小節とする構造に着目し、1から5の指番号が8個並ぶ全ての数列を出力するプログラムを作成した。その出力結果は、各指を先頭とする5列、76,125行からなる長大なテキスト・ファイルとなった。そこに「ハノンを連想する数列」と「単純なアルゴリズムを踏襲した数列」に絞るプログラムを追加。その出力結果を演奏する。

第一部「シャルル・ルイ・ハノンの墓」初演では4時間のほとんどを演奏し続け、ときどき解説トークをしたりお客様から「調」のリクエストを受け付けて、反映しながら演奏を進めます。長時間に渡るので、お茶を飲みながら自由にお過ごしください。

第二部では「ハノン・ピアノ教本」の全曲演奏コンサートとなり、メンバーが代わる代わる演奏します。「ハノン・ピアノ教本」は楽譜を見ながら聴くとより一層楽しめるので、お持ちの方はご持参されることをお勧めいたします。


方法マシンからのおたより 08年2月号より

◎3月10日「ハノン大演奏会〜方法マシンピアノ仕様〜」

 仕様書改訂後初の創作作品「シャルル・ルイ・ハノンの墓」(以
 下「ハノンの墓」)の世界初演、すべての指を均等に独立させる
 ことを目標としたピアノの練習課題60曲からなる、シャルル・
 ルイ・ハノン作曲「ハノン・ピアノ教本」(以下「ピアノ教本」)
 の全曲を演奏。

  演奏技術そのものに焦点をあてた「ピアノ教本」へのオマージュ
 として作曲した「ハノンの墓」は、5人10手のピアノ演奏で4
 時間に及んだ。「ピアノ教本」の第1部を占めている16分音符
 8個の2拍を1小節とする構造に注目し、1から5の指番号が8
 個並ぶ全てのパターン(各指を先頭とする5列、78125行)
 から類型化した「反復」「51」「55」「回文」を演奏。「反
 復」は1拍目と2拍目が同じ(例:21112111)、「51」
 は5個目が1(例:21231212)、「55」は5個目が5
 (例:21215121)、「回文」は1拍目2拍目がシンメト
 リー(例:21411412)となる指番号パターンである。5
 人の演奏者は、1個目が1、1個目が2・・という、拍頭の指番
 号によってパート割りされた。要するに作曲したのは指番号であ
 るため、ドレミの音高に関するルールは存在せず、演奏中に観客
 の方から調のリクエストを受け付け、ニ長調と言われれば、自分
 の鍵盤の範囲で、ファとドにシャープを付けて演奏した。5人そ
 れぞれの鍵盤範囲は違うため、つねにポリモードの音響となった。

  「ピアノ教本」の構成は、「指が、素早く、力強く、1本1本
 独立して、均等に動くようになるための準備練習」(1から20
 番)、第2部「もっとむずかしいテクニックのための準備」(2
 1から43番)、第3部「最高のテクニックを身につけるための
 練習」(44から60番)。1番ひとりずつ交代で演奏。「技術
 訓練」と「記譜通りの正確な演奏」を実行し、それを観客に見せ
 ることが課題である我々こそがしうる、前人未到の全曲奏破を実
 現した。(文責:鶴見)


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